零式艦上戦闘機(ゼロ戦)、秋水の実物模型が見られる三菱重工「大江時計台航空史料室」へ




リニューアルオープンした三菱重工の大江時計台航空史料室

2020年1月31日にリニューアルオープンした三菱重工の「大江時計台航空史料室」へ行ってきました。

これまでは、小牧空港(名古屋空港)からほど近い、三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所の敷地内に資料室としてあったのですが、このたび名古屋市港区にある大江工場の時計台へ移設、リニューアルオープンとなりました。

資料室には、大正から昭和20年代までの戦闘機を中心とした航空機開発に関する資料が展示されています。

見どころは、第2次世界大戦中に活躍した「零式艦上戦闘機(ゼロ戦)」と、ロケットエンジンを搭載した日本初の戦闘機「秋水(しゅうすい)」の実物模型、そして当時の貴重な技術資料です。

大江時計台航空史料室の予約方法

Web上の申し込みフォームから必要事項を記入して申し込みます。

最初にお伝えしたいのが「大江時計台航空史料室」は、ミュージアムや観光施設ではありません。三菱重工グループさんの社内研修施設です。ご厚意で一般にも公開してくださっています。(ありがたい…)

なので、見学できるのは、工場稼働日内の月曜日、水曜日、金曜日のみ。年齢制限は高校生以上で、見学時には身分証明書(免許証でOKでした)が必要です。また、見学時には鍵付きロッカーに手荷物を全て預けます。カメラ、スマホ、ノートやペンなどの持ち込みは一切できません(ブロガーにとっては厳しい条件ですね…)。1日4回、各2時間の見学枠が設けられており、きっかり時間通りに見学終了です。ちなみにお土産コーナーはないです。

それらの留意事項を確認し、Webフォームから予約します。希望日をメールして予約が確定すると受付番号が書かれた完了メールが届きます。当日はこのメール画面を受付に提示します。(10分前から受付開始)

『大江時計台航空史料室』 申し込みフォームはこちら

大江時計台航空史料室へのアクセス方法

・名鉄名古屋本線「神宮前」駅より タクシー約15分
・JR東海道本線「笠寺」駅、名鉄常滑線「大江」駅より タクシー約10分

「駐車場はございませんので公共交通機関をご利用ください」とのことだったので、タクシーで行くことにしました。ところが、前日に名鉄タクシー(052-331-2211)にお電話したところ、その時間はもう予約がいっぱいで受け付けられませんとのこと。そ、そうですよね、見学人数は各時間枠ごとに30名。全員1人1台タクシーで来たら、とても配車なんて追いつかないですよね…。

という訳で、徒歩で行くことに。タクシーで10分の距離ですから、徒歩だと約30分掛かります。ちょっと遠いけど、歩けない距離じゃないですね。のんびり行きますか。

名鉄常滑線「大江」駅に到着しました。改札は1つだけ。改札を出ると目の前に大きな道路があるので、その道路を右に進みます。

2つ目の信号がある交差点「港東通」を右に曲がると、線路の向こう側に渡れる歩道橋があるので、走っている電車を見下ろしながら反対側に渡ります。

ちょうど電車が。そういえば、戦後に機関車の事故原因が、ある振動だと特定したのはゼロ戦開発にも携わった松平さんという方でした。松平さんがその後新幹線開発にも携わられたと聞いて「ゼロ戦から新幹線まで、何てすごい人だ…」と衝撃を受けたのを、思い出しました。もう、ひたすら歩いているので、いろいろ考える時間がたっぷりあります。

そこから、時計台が見えるまでずーっとまっすぐです。途中踏切の手前で歩道を道路の右側から左側に渡りますが、とにかくまっすぐ!工場が多いので、途中で「あれ?ここにも三菱重工の看板が…」と惑わされそうになりますが、安心してください。まだです。

「大江時計台航空資料室」の看板が見えたら到着です。予約時間の10分前には、この白い扉を開けて中へ入っていくと受付してくださいます。

受付時にタブレットを受け取ります。(展示に夢中でタブレットの内容があまり見れなかったかも…)鍵付きのロッカーに荷物を全て預けたら、階段へ2階へ上がり見学スタートです。

大江時計台航空史料室のフロアマップ

見学の順路は2階⇒1階の順番です。エントランス部分のみ写真撮影が可能で、あとは全て撮影禁止です。

エントランスの写真。一〇式艦上戦闘機。日本海軍初の国産艦上戦闘機です。

エントランスの写真2つ目。昔の時計台。

三菱における航空機開発と製造の歴史

館内の写真は撮影できないので、メディアに公開されている資料をお借りしました。以下は産経ニュースから。初飛行から終戦まで、36機のプラモデルが展示されています。すぐそばにタッチパネルがあり、それぞれの飛行機についての概要紹介が見れます。

タッチパネルで飛行機を選ぶとプラモデルの下が円形状に光るので「あ!この飛行機の紹介なのね」と分かりやすいです。しかも、写真も豊富。ゼロ戦が飛行している姿など、当時の貴重な写真も。全部の飛行機の解説を見たいので、結構な時間を費してしまいました(笑)2時間しかないのに!

出展元:https://www.sankei.com/photo/story/news/200130/sty2001300014-n1.html

外国技術が与えた影響と、日本人技術者の尽力

日本の航空産業の黎明は大正時代。第一次世界大戦で、航空の重要性が注目されました。そこで海外から技術者を招いたり、ライセンス契約を結んだり。国の指名で三菱は空力に注力し、当時作られた2メートル風洞は今も現存しているそうです。

2時間で読み切れないほど資料が豊富でした。三菱の担当者が海外視察へ行った際の報告書、金星エンジンの取扱説明書、風洞の技術書、試作戦闘機についての軍への報告書。航空機がどのようなテスト(速度、高度など)を行っているかの動画など。ここで培われた技術が連綿と現代へ続いているのだなと思います。

もちろん開発に失敗して、あやうく軍に買い取ってもらえないような経験もあったそうですが。「目的は要求能力を満たすこと…」から始まる長文の報告書は、軍の高い要求と、それに応じるべく試行錯誤してきた技術者の軌跡が刻まれていました。

スタジオジブリの映画「風立ちぬ」主人公のモデルになったゼロ戦の設計者、堀越二郎さんもここで勤務されていたのだとか。CAD登場前の時代、設計者が使っていた設計図を描くための道具も展示されていました。カラス口(製図用の特殊なペン)を使って書かれた本物の設計図は必見です。

出展元:http://www.ghibli.jp/kazetachinu/prono.html

ゼロ戦、秋水の実物大モデル

出展元:https://www.asahi.com/articles/ASN1Z5T40N1ZOIPE009.html

朝日新聞デジタルよりお借りしました。床に描かれた設計図と、その上の実物が、まるで設計者の頭の中みたいだなと思いました。勤務先のベテラン設計担当者の方とお話ししていた時、図面を見ただけで頭の中で実物の絵が組み上がるって仰ってたのを思い出しました。私はとてもそんなイメージはできないのですが、設計図から生まれてきたゼロ戦、って感じがしてこの展示方法は好きです。

あと、ゼロ戦がすごく近くで見れます。真正面から、下から見上げるような形で見られるのですが、大きいなって思いました。プラモデルで見ていた時のゼロ戦はそこまで大きいと思わなかったのに、実物大の威力。ゼロ戦でこんなに大きく感じるなら、一式陸攻なんて下から見上げたらめちゃくちゃ大きいんだろうな。(一式陸攻の実物大モデルは知覧特攻平和会館にありますね)

このゼロ戦は、ヤップ島(ミクロネシア連邦)に塗装が剥がれて赤茶色の下塗りが露呈した状態でまさに残骸として打ち捨てられていた機体を使って復元されたそうです。「えーっ、復元ってこんなにきれいになるの?」と一瞬思いましたが、そういえば過去外国で行われたゼロ戦の復元って確か元々の部品2割くらいであとはほぼ新造だったかも。どちらにせよ高額な投資。そして、非常に価値のある展示です。復元に使われなかった部品も展示してあり、ボロボロのジュラルミンが間近で見られます。

出展元:https://www.asahi.com/articles/ASN1Z5T40N1ZOIPE009.html

そして「秋水(しゅうすい)」個人的に、めちゃくちゃ凄いと思っています。ドイツ空軍の開発したメッサーシュミットMe163の設計資料を持ち帰って日本で作ろうとしたら、肝心の設計図を運んでいた潜水艦がアメリカの攻撃を受けて海に沈んでしまったんです。幸いにも持ち帰っていた外形3面図と製造には少なすぎる資料から「たぶんこんな感じかな…」ってロケット戦闘機を作ったんですよ。それが国産初のロケット戦闘機。もはや、ほぼ新規開発だと思います。当時の技術者の力に、頭が下がりますね。

ちなみになぜ秋水という名称なのかGoogle先生に尋ねてみたところ、岡野勝敏海軍少尉の「秋水(利剣)三尺露を払う」という短歌に由来するとか。もともと秋ごろのとても澄んだ水から転じて、剣の曇りのない冷たい光、B29を一撃で振り払おうぞ、という意味が込められていたそうです。残念ながら、実践では活躍せずに終戦を迎えることとなりました。

まとめ

2時間では見学時間が足りませんでした(笑)なのでもう1回行きたいです。もし幸運でしたら、三菱重工の方が三菱重工の従業員さん向けに展示内容の説明をされている場面に遭遇できます。(いつもいらっしゃる訳ではない)もしその貴重なシーンに出会ったら、そっと後ろからついて行って、一緒に貴重なお話を聞かせていただきましょう。会社の有休を取ってでも、行って良かったです。